都会の、とある住宅地をネジロにするオスののら猫です。ギリッと睨みつける眼力と首に巻いた真っ赤なスカーフがトレードマーク。
目つきが悪くて、ガラが悪くて、ケンカっぱやい。そんな三拍子そろったドロボウ猫クロッチはなぜか内股歩きでお尻のあたりがふっくらしている。
それは、子猫のときに地域ねこボランティアの人に捕まって去勢手術をされてしまったせい。
頭の回転が早く、身体能力も抜群のクロツチは、界隈の猫たちから一目おかれる存在です。子猫や年老いた猫たちへの面倒見がよくて心やさしいクロッチ。
でも、実はとってもシャイな性格で無理に人間に近づこうとすると、おもらしをしてしまうという恥ずかしい秘密。
まわりで産まれる子猫たちが、やさしい里親さんのもとにもらわれていくなか、人に慣れる事のできないクロッチは、いつまでも、ドロボウのら猫として、アスファルトの上で生きていくしかないのです。
砂場のトイレなどないので、クロッチはスーパーの駐車場のくぼみで用をすませますが、見つかるたびに店員さんから怒鳴られます。
そんなクロッチの夢は、
おいしい魚をたらふく食べる事。
でも一番の願いは、やわらかい土の上に草花に隠れて用を足す事。
そして木陰のやわらかい落ち葉のふとんの上でひっそりと眠る事。
土と緑が消えいく中、厳しい競争社会を生き抜くクロッチの日常を、
個性的なノラ猫、飼い猫たちとの交流をまじえて描く
切なくもおもしろおかしい物語がはじまります。