【クロッチ作品を創るラッキーワイドの造形作家たち。8】
岡谷侑紀(おかやゆうき)さん
高座にあがってちょいと一席! 羽織姿が粋だねぇ
「噺家クロッチ」は展覧会で重要な役どころをおおせつかっている。この立体作品ができるまでの工程が一目でわかるように、粘土の原形、スチロール、石膏取り、そしてFRPの完成像、さらにそれを3Dプリンターで出力したものまでが時系列で展示される。こんなふうに立体造形物の制作工程が見られるチャンスなんてそうそうあるもんじゃあない。
「思いを込めてクロッチを作っている」と語るのは岡谷侑紀さん。
「見る人がクロッチを好きになってほしい!」と願いながら作品に取り組んでいる。
高校時代の友人が仕事をしていたことがきっかけでラッキーワイドに入社してから6年目。「チマチマやるよりはガツガツやるほうが好き」という岡谷さんは、細かいことは嫌いではないけれど、そればかりが続くとムズムズしてくる、らしい。ものづくりが大好きで、学生時代、空間デザインよりのプロダクトデザインを専攻した。
造形の仕事をしていなかったら? との問いには、「営業かな」。「美容師になりたいと思ったことも」との答え。ものづくり業界では変わり種? なんだろうか。人とかかわることが好きな岡谷さんはチームを組んで作品を作ることが楽しいという。自分にはない様々な考えに触れることができるし、新人が腕をあげていくのを見ることもうれしいそうだ。
今回、はじめて手がけた「キャラクター」制作は「とても楽しい!」という。
とはいえ、着物のひだや、瞳の位置には思いのほか時間がかかり苦労したそうだ。そして、ついに、固い材質でできているとは思えないような、柔らかい布の質感や、今にもしゃべりだしそうなオイラの表情を作りあげてくれた。岡谷さんは、作品を人がどう見てくれるのか、反応が楽しみだと語る。そして、見た人たちが「よ〜し、噺家クロッチ、気に入った!」と、「3Dプリンターで出力した作品の縮小サイズが欲しい!」と思わせるような作品にしようと仕上げの手に力を込める。
「立体作品をこういう工程で制作している」ことを一般の人たちに知って欲しいという岡谷さん。ひとつの立体造形物ができあがる工程の複雑さに、オイラ、本当に驚いたよ
「いいものを作りたい」。
「自分自身で考えながら仕事をすることが大切」と、考えている岡谷さんは、いつも新しい方法にチャレンジしている。まだ扱っていない材料もあるし、やってみなければ何が得意なのかさえわからない。ジョブローテーションをしながらさまざまな技術を身につけたいと、仕事にはとても貪欲だ。その一方で、「根本的に楽しみながら仕事をしたい」から「どうしたら仕事が楽しくなるのか?」を考え、自分なりに工夫をこらしている。自分がいっぱいになるとまわりがみえなくなるので、それは避けるようにしているそうだ。
最後に自分を動物に例えると? との問いには「犬ではなく猫かな」。
なぜ?「人見知りだから」なんだそう。
「人を楽しませ、自分も楽しむ」。軽やかなこの抜け感、そう、猫だね。