都会の住宅街のかたすみでクロッチは毎日を一生懸命に生き抜いています。まわりのノラ猫たちや飼い猫、老いた亀、そして鳶の親方など人間とクロッチとの心のふれあいの物語です。クロッチの生い立ち、友情、初恋のエピソードも含まれた、せつなくも心あたたまる7話をおさめたクロッチ初の短編集です。
ラジオドラマ風朗読CDは人気ナレーター、鈴木万由香さんがクロッチの世界へと誘います。「のら猫クロッチ物語」ラジオドラマ風朗読劇。CDは全7話収録です。
音響制作:村田健太郎(株式会社神南)
制作著作:ヌールエ デザイン総合研究所
©2016 NURUE Inc.
以下は、「序章」と「第1話 似た者同士」「第2話 紫陽花に涙かくして」「第3話 夏祭り」「第4話 桜雨」を配信します。
【ラジオドラマ風のら猫クロッチ物語★序章】
『家もなく 身寄りもないが 明日がある』
作:かりにゃん 朗読:鈴木万由香
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のら猫が生きる世界は過酷だけれど
愛と情けと 感動でいっぱい。
クロッチは
とある住宅地をネジロにするのら猫です。
目つきがわるくて、ケンカっぱやいクロッチ。
でも本当は、見た目とはうらはらに、
子猫や年老いた猫たちへの
面倒見がいい心やさしい猫なのです。
恥ずかしがりやのクロッチは、
自分のこととなると不器用で損をしてばかり。
まわりの子猫たちが
里親さんにもらわれていくなか、
人に慣れることができなクロッチは、
いつまでもドロボウのら猫として、
アスファルトの上で
生きていくしかないのです。
砂場のトイレがないので
クロッチはスーパーの駐車場のくぼみで
用をすませますが
見つかるたびに
店員さんから怒鳴られます。
そんなクロッチの夢は
おいしい魚を ゆっくり
たらふく食べること。
草花に隠れてやわらかい
土の上に用を足すこと。
落ち葉の上で
ひっそりと眠ること・・・
そして
猫も犬も鳥も人も
みんなが仲良く暮らすこと。
さあ、のら猫たち、飼い猫たち、
カラスや虫たち、
そして人とクロッチとの
おもしろくもせつない物語がはじまります。
【ラジオドラマ風のら猫クロッチ物語★第1話】
「似た者同士」
抜群の運動神経が自慢のクロッチは、ある時、自分より高い場所で身軽に動きまわる鳶の親方の隙のない仕事っぷりに惚れ込でしまう。一方、クロッチの目ヂカラと潔い野良っぷりに感心した鳶の親方は、毎日、弁当のシャケをクロッチにあたえるようになった。ところが、ある日、気性のあらいチャックロというメス猫がシャケを横取りする。その日をさかいにクロッチは姿を消してしまうのだが……男気あふれるクロッチと鳶の親方の友情の物語。
【ラジオドラマ風のら猫クロッチ物語★第2話】
「紫陽花に涙かくして」
野良の生きざまにあこがれ、クロッチを兄のように慕う飼い猫のチャッポ。クロッチがとめるのもきかず、家出を決行し、あこがれの野良猫稼業をはじめる。仲睦まじく楽しい日々を過ごす二人。「相棒ってのも悪くない」と、クロッチが思いはじめた矢先、チャッポは足に大怪我を負ってしまう。うら若い相棒の将来を考え、クロッチがとった行動とは?
【ラジオドラマ風のら猫クロッチ物語★第3話】
「夏祭り」
遠くで鳴り響く夏祭りの太鼓。この響きを聞くたびに、クロッチは、夏祭りの夜に自動車に轢かれて死んだ長兄のクロベエのことを思い出す。年月はめぐり、夏祭りがやってきた。宵闇の中、はしゃぎまわる2匹の子猫に向かって1台の自動車が突進してくる。クロッチは我が身もかえりみず、子猫たちを助けようと、自動車の前で立ちすくむ子猫たちに飛びかかる。闇に響くブレーキの音。我に返ったクロッチが目にしたのは信じがたい光景だった。
【ラジオドラマ風のら猫クロッチ物語★第4話】
「桜雨」
クマは、無邪気でちょっぴりゆるい尾曲がりの黒猫。ノラとして生まれながら、自分勝手な人間の都合で、拾われて、そして捨てられふたたびノラに舞い戻った。そんなクマを、弟のように面倒をみるクロッチ。どんな相手にも心を開き純真なクマを心から愛おしいと思うのだ。今宵は桜が満開だというのに、食あたりで一歩も動けないクロッチは「クマに、花見のごちそうを食べさせてやりたかった」。と悔しがる。ところが、思いもかけないできごとが・・・